クズで冷徹な御曹司は、キケンな沼です
「だって表情が豊かだから」

「別に、何も」


じゃあ、まさか……昨日のキスの余韻で? キスした仲だから、私に笑顔を見せてくれるの?

ってことは、

ついに先輩が、私に心を開いたの⁉


「先輩、今なら私、天に召されても悔いはありません!」

「……」

「……あれ?」


こういった類の事を言うと、いつも「はぁ」とか「うざ」とか「変な奴」とか言われるのに。まさかの無言?

もしかして先輩、調子が悪い?

じゃないと私にニコニコするって、おかしいよね? 小言の一つも言わないし。


「お肉料理やめます! すぐにおかゆを作りますねッ」

「……」


バタバタ忙しくなく動く私を、尚も笑顔で見続ける先輩。

あぁ、今まで私を三秒以上続けて見たこと無かったのに。先輩、よほど調子が優れないんですね。

待っててください!
必ず楽にしてあげますから――!

と、お米を入れようと鍋の蓋を開けた、


その時だった。

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