義弟に婚約者を奪われ、悪女として断罪されましたがなぜか邪神に溺愛されハッピーエンド?を迎えることになりました🐍
2.獲物を求めて動き始める運命
「おはよう、フィオナ」
「リリー、おはよう」
馬車が学校に着くと、アランはランと一緒にさっさと行ってしまった。エスコートぐらいしてくれてもと思わないでもないけど、子爵令嬢の私が伯爵令息であるアランに我儘を言うことはできない。何よりも嫌われたくはないのだ。
馬車から降りた私に茶色の髪を一つ結びにした女子生徒が近寄ってきた。彼女は私の友人で同じ子爵家の令嬢。リリー・ロヴァルだ。
「ねぇねぇ、聞いた?」
リリーは話したくて仕方がないという気持ちを全面に出す。彼女は噂の類いが大好きなのだ。
「何を?」
「今日、転校生が来るんだって」
「転校生?それってちょっとおかしくない?」
私たちが通う魔法学校は貴族の義務だ。十四歳になった貴族は必ず通わなくてはいけない。経済的に厳しい貴族家は国が援助する。援助を受けた者は暫くは国に奉仕活動をして援助分を返すという仕組みだ。
なぜ魔法学校に通うのが強制なのかというと、貴族には民を守義務が生じる。そのため、有事の際は民の盾となり剣となれというのが初代国王の教えで、ここヨアート国はそれを今でも守っている。
だから令嬢、令息関係なく戦い方を学ぶのだ。そのため、転校生というものは存在しないはず。だって、十四歳になれば強制的に通わされるのだから。
「うーん、詳しくは私も知らないんだけどね」とリリーは前置きをした。
「あくまで噂よ。その転校生は貴族なのに魔力がなかったんですって」
貴族なら誰もが持っているのが魔力だ。それ故に貴族は特権扱いとなる。
「だから魔法学校ではなく、平民でも通える騎士学校に通ってたみたいなんだけど、ある日突然、何の前触れもなく魔力が発現したらしいの」
「そんなことがあるの?」
「だから、あくまで噂だし、私も詳しくは知らないんだって。メカニズムは解明されてないし、異例のことだから研究対象にもなっているらしいよ。今後、似たようなケースが出てくるかもしれないしね」
「そうね」
貴族でありながら魔力がなく、騎士学校に通っていたのならとても肩身の狭い思いをしていたのではないかしら?
魔力の発現は喜ばしいことだけど、そのせいで噂の的。その転校生にとっては落ち着かない日々が続きそうね。
「どんな子が来るのかしら?男の子だったらいいなぁ」
手を組み、キラキラとして顔でリリーは言う。
「どうして?」
「だって、男の子で、格好良かったらいいじゃない」
人柄もわかっていないのにリリーはその転校生を婚約者候補に入れているようだ。
実際、学校で知り合い婚約に至るケースはよくある。社交界に次ぐ出会いの場。そのため、学校では学ぶことよりも出会いを重要視する貴族令嬢、令息は多い。
有事の際は率先して民の盾なり、剣となる目的の学校だけどヨアート国は長く平和が続いている。だからか、あまり危機感がない。”有事の際”がどういうものなのか本当の意味で想像できているものはごく僅か。
いざという時は傭兵を雇って国に貢献することも可能。だからよほどの辺境で魔物に悩まされている領地を持つ貴族でない限りは真面目に学ぼうとはならないのだ。
「女の子の可能性もあるわよ」と私はリリーに言ったけど彼女の耳には入っていなかった。
「どんな子だろう。楽しみぃ」
まぁいいか。
◇◇◇
「クロヴィス・トラントです」
転校生はリリーの希望通り、男性だった。ただ伯爵令息になるから、子爵令嬢であるリリーが婚約者候補になるのは少し難しい。子爵家は下級貴族になるので婚約相手は同じ子爵家か男爵家もしくは豪商(平民)になる。
ただ伯爵は身分でいうと子爵の一つ上なので婚約も可能ではある。
クロヴィスは黒い髪に血のように赤い目、そして美白というよりは病的なまでに白い肌をしていた。中性的な顔立ちで、”イケメン”というよりは”美人”という言葉が似合う。ただ、女性に間違えられるようなランが持つ儚い雰囲気やナヨナヨしたような頼りなさ、庇護欲を駆り立てるようなものはない。
ただ色気のようなものが彼からは漂っているので男女ともに人気が出そうだ。
「騎士学校に通っていたというからもっとがっちりした人が来るのかと思ってた。なんかイメージと違う」
リリーの言葉に私も頷いた。クロヴィスは線が細くて、剣を振り回すような人には見えない。
「フォークより重たいものは持てません」と言いそうな感じだ。
「!?」
クロヴィスと目が合った。彼は私を見て、にっこりと微笑んだ。その姿を見て、彼とどこかで合ったような気がした。なんだか懐かしいような・・・・。
「きゃー、目が合った。今、絶対に私を見て微笑んだわ。私に気があるかのかしら」
何かを思い出しそうになったけど、後ろではしゃぐリリーの声に吹き飛んでしまった。どうやらクロヴィスはリリーのタイプだったらしい。
まぁ、あそこまで容姿が整っていたらリリーがはしゃぐのも無理はない。現に、頬を染める令嬢が教室内に多くいる。みんな浮き足立っているようだ。
「リリー、おはよう」
馬車が学校に着くと、アランはランと一緒にさっさと行ってしまった。エスコートぐらいしてくれてもと思わないでもないけど、子爵令嬢の私が伯爵令息であるアランに我儘を言うことはできない。何よりも嫌われたくはないのだ。
馬車から降りた私に茶色の髪を一つ結びにした女子生徒が近寄ってきた。彼女は私の友人で同じ子爵家の令嬢。リリー・ロヴァルだ。
「ねぇねぇ、聞いた?」
リリーは話したくて仕方がないという気持ちを全面に出す。彼女は噂の類いが大好きなのだ。
「何を?」
「今日、転校生が来るんだって」
「転校生?それってちょっとおかしくない?」
私たちが通う魔法学校は貴族の義務だ。十四歳になった貴族は必ず通わなくてはいけない。経済的に厳しい貴族家は国が援助する。援助を受けた者は暫くは国に奉仕活動をして援助分を返すという仕組みだ。
なぜ魔法学校に通うのが強制なのかというと、貴族には民を守義務が生じる。そのため、有事の際は民の盾となり剣となれというのが初代国王の教えで、ここヨアート国はそれを今でも守っている。
だから令嬢、令息関係なく戦い方を学ぶのだ。そのため、転校生というものは存在しないはず。だって、十四歳になれば強制的に通わされるのだから。
「うーん、詳しくは私も知らないんだけどね」とリリーは前置きをした。
「あくまで噂よ。その転校生は貴族なのに魔力がなかったんですって」
貴族なら誰もが持っているのが魔力だ。それ故に貴族は特権扱いとなる。
「だから魔法学校ではなく、平民でも通える騎士学校に通ってたみたいなんだけど、ある日突然、何の前触れもなく魔力が発現したらしいの」
「そんなことがあるの?」
「だから、あくまで噂だし、私も詳しくは知らないんだって。メカニズムは解明されてないし、異例のことだから研究対象にもなっているらしいよ。今後、似たようなケースが出てくるかもしれないしね」
「そうね」
貴族でありながら魔力がなく、騎士学校に通っていたのならとても肩身の狭い思いをしていたのではないかしら?
魔力の発現は喜ばしいことだけど、そのせいで噂の的。その転校生にとっては落ち着かない日々が続きそうね。
「どんな子が来るのかしら?男の子だったらいいなぁ」
手を組み、キラキラとして顔でリリーは言う。
「どうして?」
「だって、男の子で、格好良かったらいいじゃない」
人柄もわかっていないのにリリーはその転校生を婚約者候補に入れているようだ。
実際、学校で知り合い婚約に至るケースはよくある。社交界に次ぐ出会いの場。そのため、学校では学ぶことよりも出会いを重要視する貴族令嬢、令息は多い。
有事の際は率先して民の盾なり、剣となる目的の学校だけどヨアート国は長く平和が続いている。だからか、あまり危機感がない。”有事の際”がどういうものなのか本当の意味で想像できているものはごく僅か。
いざという時は傭兵を雇って国に貢献することも可能。だからよほどの辺境で魔物に悩まされている領地を持つ貴族でない限りは真面目に学ぼうとはならないのだ。
「女の子の可能性もあるわよ」と私はリリーに言ったけど彼女の耳には入っていなかった。
「どんな子だろう。楽しみぃ」
まぁいいか。
◇◇◇
「クロヴィス・トラントです」
転校生はリリーの希望通り、男性だった。ただ伯爵令息になるから、子爵令嬢であるリリーが婚約者候補になるのは少し難しい。子爵家は下級貴族になるので婚約相手は同じ子爵家か男爵家もしくは豪商(平民)になる。
ただ伯爵は身分でいうと子爵の一つ上なので婚約も可能ではある。
クロヴィスは黒い髪に血のように赤い目、そして美白というよりは病的なまでに白い肌をしていた。中性的な顔立ちで、”イケメン”というよりは”美人”という言葉が似合う。ただ、女性に間違えられるようなランが持つ儚い雰囲気やナヨナヨしたような頼りなさ、庇護欲を駆り立てるようなものはない。
ただ色気のようなものが彼からは漂っているので男女ともに人気が出そうだ。
「騎士学校に通っていたというからもっとがっちりした人が来るのかと思ってた。なんかイメージと違う」
リリーの言葉に私も頷いた。クロヴィスは線が細くて、剣を振り回すような人には見えない。
「フォークより重たいものは持てません」と言いそうな感じだ。
「!?」
クロヴィスと目が合った。彼は私を見て、にっこりと微笑んだ。その姿を見て、彼とどこかで合ったような気がした。なんだか懐かしいような・・・・。
「きゃー、目が合った。今、絶対に私を見て微笑んだわ。私に気があるかのかしら」
何かを思い出しそうになったけど、後ろではしゃぐリリーの声に吹き飛んでしまった。どうやらクロヴィスはリリーのタイプだったらしい。
まぁ、あそこまで容姿が整っていたらリリーがはしゃぐのも無理はない。現に、頬を染める令嬢が教室内に多くいる。みんな浮き足立っているようだ。