義弟に婚約者を奪われ、悪女として断罪されましたがなぜか邪神に溺愛されハッピーエンド?を迎えることになりました🐍
5.蛇の毒
side .ラン
”愛し合っているから婚約して、結婚するわけじゃない”
「だったら、僕でも良いじゃないか」
去っていく義姉さんの背を見ながら思わず呟いてしまった。義姉さんの耳には届いてない。その証拠に義姉さんはもう興味が失せたとばかりに、一度も振り返っては来なかった。
どうして義姉さんは自分の母親と同じ道を歩もうとするんだろうか。
愛のない結婚をしたから、義姉さんの母親は不幸になったのに。
義姉さんの母親に僕は会ったことがない。でも、義姉さんを見ていたら分かる。義姉さんは愛情を与えられずに育った可哀想な人だ。そういう人は総じて冷たい人間に育つ。僕の母が言っていた。
義姉さんの母親は最低な人だ。だから僕の母は一生懸命、義姉さんを愛そうとしているし、優しく接しようとしている。僕もそうするように心がけている。
でも義姉さんの心の傷は思った以上に深くて、義姉さんはいまだに僕たちに心を開いてはくれない。
さっき、声をかけられて嬉しかったのに。やっと心を開いてくれた。僕たちと家族になってくれたと思ったのに、まさかあんなことを言われるなんて。
◇◇◇
その日の夜、僕は義姉さんのことが気になって寝付けなかった。
義姉さんはアランを愛していない。僕はアランを愛している。
義姉さんにはただの友達だって言ったけど、嘘だ。だって、義姉さんがアランのことを愛していると思ったから本当のことを言えなかった。
でも、義姉さんはアランのことを愛していなかった。
『なら、お前が義姉さんからアランを奪えばいい』
黒い蛇が舌を出して言う。僕はその蛇に首を振って答えた。
僕が義姉さんからアランを?
そんなこと、できるわけない。
『なぜ?』
当たり前だ。義姉さんが悲しむ。
『悲しみはしないさ。義姉さんはアランのことを愛していないんだろ』
蛇は目を細めて僕を見つめる。蛇の言っていた通り、義姉さんはアランを愛していない。アランの方は分からないけど。でも、もしアランが義姉さんを愛していたら、それはそれで悲惨だ。だって、義姉さんはアランのことを愛していないんだから。
僕はアランを愛している。なら、僕の方がアランに相応しい?
僕の考えを知っているかのように蛇は更に続ける。
『愛のない結婚は不幸を呼ぶだけさ』
そうだ。蛇の言う通りだ。その証拠に義姉さんは不幸になった。義姉さんの母親は最低な人だった。愛していない人と結婚した愚かな人だった。自分の愚かさを棚に上げて義姉さんのせいにして、義姉さんを虐待していた人間のクズだ。
もし、義姉さんがアランと結婚したら義姉さんも自分の子供に同じことをするんじゃないだろうか?
虐待を受けた人は自分の子供に虐待をするって言うし。
だったら、僕が義姉さんの過ちを正さなければいけない。それは僕にしかできないことだ。
いつの間にか蛇はいなくなっていた。
◇◇◇
なんだか、不思議な夢を見ていた気がする。
どんな夢を見ていたのかまるで覚えていない。
昨夜は寝付けなくて、いつ寝たのかすら朧だ。誰かと話していたような気がする。いや、あれは人だったのだろうか?何かそれも違うような。
ダメだな。何も思い出せないや。
「ラン」
朝、いつものようにアランが婚約者である義姉を迎えにきた。義姉は当たり前のようにアランを迎え入れる。その姿に胸がジクジク痛む。
そんな僕の心境など知る由もないアランが優しい笑みを僕に向ける。これは僕が義姉さんの義弟だから向けられるものだ。そうでなければ、僕のような存在はアランの視界に入ることさえできなかっただろう。
いいな、義姉さんは。
生まれながらの貴族で、アランという素敵な婚約者を持って。それが当然の環境の中で育っているからだろうね。ありがたみが分からないのは。
『なら、お前が義姉さんからアランを奪えばいい』
頭の中で木霊する言葉は悪魔の囁きか、僕の欲望か。
義姉さんはアランを愛していない。でも、僕はアランを愛している。
「ラン、どうかしたのか?」
なら、奪ってもいいよね。義姉さんはたくさんの物を持っている。一つぐらい、僕に譲ってもいいと思うんだ。
「ううん、何でもない。アラン」
僕はアランを愛している。でも、義姉さんはアランを愛していない。
”愛し合っているから婚約して、結婚するわけじゃない”
「だったら、僕でも良いじゃないか」
去っていく義姉さんの背を見ながら思わず呟いてしまった。義姉さんの耳には届いてない。その証拠に義姉さんはもう興味が失せたとばかりに、一度も振り返っては来なかった。
どうして義姉さんは自分の母親と同じ道を歩もうとするんだろうか。
愛のない結婚をしたから、義姉さんの母親は不幸になったのに。
義姉さんの母親に僕は会ったことがない。でも、義姉さんを見ていたら分かる。義姉さんは愛情を与えられずに育った可哀想な人だ。そういう人は総じて冷たい人間に育つ。僕の母が言っていた。
義姉さんの母親は最低な人だ。だから僕の母は一生懸命、義姉さんを愛そうとしているし、優しく接しようとしている。僕もそうするように心がけている。
でも義姉さんの心の傷は思った以上に深くて、義姉さんはいまだに僕たちに心を開いてはくれない。
さっき、声をかけられて嬉しかったのに。やっと心を開いてくれた。僕たちと家族になってくれたと思ったのに、まさかあんなことを言われるなんて。
◇◇◇
その日の夜、僕は義姉さんのことが気になって寝付けなかった。
義姉さんはアランを愛していない。僕はアランを愛している。
義姉さんにはただの友達だって言ったけど、嘘だ。だって、義姉さんがアランのことを愛していると思ったから本当のことを言えなかった。
でも、義姉さんはアランのことを愛していなかった。
『なら、お前が義姉さんからアランを奪えばいい』
黒い蛇が舌を出して言う。僕はその蛇に首を振って答えた。
僕が義姉さんからアランを?
そんなこと、できるわけない。
『なぜ?』
当たり前だ。義姉さんが悲しむ。
『悲しみはしないさ。義姉さんはアランのことを愛していないんだろ』
蛇は目を細めて僕を見つめる。蛇の言っていた通り、義姉さんはアランを愛していない。アランの方は分からないけど。でも、もしアランが義姉さんを愛していたら、それはそれで悲惨だ。だって、義姉さんはアランのことを愛していないんだから。
僕はアランを愛している。なら、僕の方がアランに相応しい?
僕の考えを知っているかのように蛇は更に続ける。
『愛のない結婚は不幸を呼ぶだけさ』
そうだ。蛇の言う通りだ。その証拠に義姉さんは不幸になった。義姉さんの母親は最低な人だった。愛していない人と結婚した愚かな人だった。自分の愚かさを棚に上げて義姉さんのせいにして、義姉さんを虐待していた人間のクズだ。
もし、義姉さんがアランと結婚したら義姉さんも自分の子供に同じことをするんじゃないだろうか?
虐待を受けた人は自分の子供に虐待をするって言うし。
だったら、僕が義姉さんの過ちを正さなければいけない。それは僕にしかできないことだ。
いつの間にか蛇はいなくなっていた。
◇◇◇
なんだか、不思議な夢を見ていた気がする。
どんな夢を見ていたのかまるで覚えていない。
昨夜は寝付けなくて、いつ寝たのかすら朧だ。誰かと話していたような気がする。いや、あれは人だったのだろうか?何かそれも違うような。
ダメだな。何も思い出せないや。
「ラン」
朝、いつものようにアランが婚約者である義姉を迎えにきた。義姉は当たり前のようにアランを迎え入れる。その姿に胸がジクジク痛む。
そんな僕の心境など知る由もないアランが優しい笑みを僕に向ける。これは僕が義姉さんの義弟だから向けられるものだ。そうでなければ、僕のような存在はアランの視界に入ることさえできなかっただろう。
いいな、義姉さんは。
生まれながらの貴族で、アランという素敵な婚約者を持って。それが当然の環境の中で育っているからだろうね。ありがたみが分からないのは。
『なら、お前が義姉さんからアランを奪えばいい』
頭の中で木霊する言葉は悪魔の囁きか、僕の欲望か。
義姉さんはアランを愛していない。でも、僕はアランを愛している。
「ラン、どうかしたのか?」
なら、奪ってもいいよね。義姉さんはたくさんの物を持っている。一つぐらい、僕に譲ってもいいと思うんだ。
「ううん、何でもない。アラン」
僕はアランを愛している。でも、義姉さんはアランを愛していない。