ぴか★すき
唇が離れて…何秒経ったんだろう?
いや、もしかしたら…
「何分」かもしれない。
でも、今はそんなの関係ない。
私は今、ただ…
びりびりとする唇を右手で押さえたまま、
目の前の大目くんから目が離せない。
ねえ、その表情は…
何を考えているの?
何に…
…困っているの?
その、大目くんの困ったような表情を見て、
私の中の淡い期待と、
今にも口から零れてしまいそうな「すき」の言葉は、
どろどろと溶けていった。
……そっか、困ってるんだ、大目くんは。
そうだよ、たぶん、大目くんは優しいから。
演技でもキスしてしまったことに罪悪感 感じてるんだ、きっと。
思わず目をそらした私に気付いたのか、
「優しい」大目くんは、私の左手をつかみ、口を開いた。
…やめて。何も言わないで。
私、わかるんだよ。
これでも少女漫画家なんだから。
きっと大目くんは、すごく申し訳なさそうな顔で、
「ごめん、演技でキスしたけど、気持ちは無いから」
って、言うんでしょ?
そんな、苦い後味になるくらいなら、
期待も、もう実ってしまった気持ちも、
自分から、
捨ててしまおう。