ぴか★すき

——…ありえない。

絶対、起こっちゃいけない。

どきっとするだけでも、「かわいい」と思ってしまったことだけでも、充分おかしいのに。

なんで、頬が、胸が、あつい?



片山さんが言った言葉は、あくまでも朱里が凪月に言った言葉な訳で。

僕に対して言った言葉じゃない。

ただの「セリフ」。

なのになんで、片山さんの頬は赤い?



キスしたのは、マンガの中の、朱里と凪月。

僕たちがしてるのは、ただのなりきり。

キスなんて、しなくてもいいのに。





なんでこんなにも、キスがしたいんだろう?
なんでこんなにも、顔が近いんだろう?
なんでこんなにも、唇が震えるんだろう?

なんで片山さんは…
ぎゅっと目をつぶってるんだろう?








——…「んっ…」




静かに重なった唇は、なかなかお互い、離れることができなくて。

熱いキスでもなんでもないのに、どちらともなく、声が零れて。

離れたあとの唇は、麻痺したようにびりびりと震えていた。





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