ぴか★すき
唇が離れて10秒くらいたたないと、僕は状況が判断できなかった。
そして、目の前で唇を押さえながら僕の目を見つめる片山さんと目が合い、やっと気付く。
やば…い。
それに言い訳が見つからない。
きっと言い訳しようと思えば、いくらでも見つかるんだろう。
でも、なぜか僕は言い訳をしようとなんて少しも思わなかった。
頭の片隅にすら浮かばなかった。
ただ、頭に浮かぶのは、
「この気持ちを、どうやって伝えよう」
…ただ、そのことだけ。
そのとき、ずっと目をそらせなかった片山さんの瞳が、少し陰ったような気がした。
…根拠もないのに、それだけで僕は動いてしまった。
…早く、はやく。
この気持ちを、まだ自分でも何なのかわからないこの気持ちを。
……伝えなきゃ。
思わず片山さんの左手をつかみ、口を開きかける。
——でも、声を出したのは片山さんが先だった。
「……ははっ、私、演技上手だった?」