あの子と私

そして真雪がいつものように、おにぎりを開けようとすると、ヨシが自分のお弁当を差し出した。

真雪は驚いた顔をして言う。


「えっ?」

「そんなのばっかり食べてたら、肌が荒れる…って女が言ってたから」


ヨシのお母さんが作ったお弁当を真雪ちゃんにあげるの……?


何か…凄く嫌だ。


真雪は申し訳なさそうな顔をして、ヨシに言った。


「でも、ヨシくんのが無くなるよ?」

「俺はいいよ。そのおにぎりちょーだい。コンビニのおにぎりって美味しいの?後、アリス、卵焼きちょーだいな」



『後、アリス、卵焼きちょーだいな』


ヨシの言葉が曇った私の気持ちを、一瞬で明るくする。


「うん!」

「お前アリスの卵焼きが目当てだったんだろ?」


トモがそう言い、又更に私の気持ちを明るくする。


「はい」


私はヨシに卵焼きを差し出し、ヨシは美味しそうに口に入れた。


何か凄く幸せだ。


そう思った時、ヨシが言った。


「この前はごめんな。駅で馴れ馴れしく声掛けちゃって」


その言葉を聞いて、胸がズキンとする。


駅って何?

ヨシのあの時の言葉が


頭の中を過る


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