あの子と私
席に座り、チャイムが鳴って担任が教室に入ると、ボンヤリと前を見る。

授業が始まっても先生の声が耳に入らないくらい、全く集中出来ない。

いつ来るんだろう…。

来なかったらいいのに


そう思った時、教室のドアが開いて、私はドアの方に視線を向ける。


来た……。


「おー、広瀬に相川…又遅刻か?単位取れないと、もう一回二年生だぞ?」

「分かってまーす」


そう言って広瀬は席に座り、相川は黙ったまま席に座る。

その時、相川は私の方を見て、私は思わず視線を反らした。


お願い

何も言わないで……。

心の中で強く願う。

一時間目が終わり、二時間目が終わり……相川の声が聞こえて来る度、冷や汗が出そうな程ドキドキした。

でも相川はいつも通り何も変わらなくて、何もないまま全ての授業が終わり、私はホッとして胸を撫でおろした。


良かった……。

無事に一日が終わって。

今日何も言われなかったし、誰にも言ってないみたいだから、きっと大丈夫。

相川くんは言わないでいてくれる。

二人が帰るところを見届けると、私も家へと帰る。

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