あの子と私
「ありがとう…ございます」


私は頷き、私は女に貰ったクッションの上に座る。


「そう言えば、お前、名前は何て言うんだ?」

「アリス…です」

「アリスかぁ。可愛い名前だな。アタシは正美って言うんだ。正しく美しいって書くんだけどさぁ、名前と全然釣り合ってねぇーだろ?」


正美はそう言って笑った。


「そんな事……。私だって…全然名前負けしてます…」

「そんな事ねぇーよ!アリスって感じの顔してるじゃん」

「……」


正美はよく笑う。


そしてよくしゃべる。

それは少しずつ緊張を解し、安心感へと変わっていった。

あの恐怖感が嘘みたいに。


「わりぃんだけどさ、吸っていいか?」


正美はそう言ってタバコを取り出し、私は頷く。

そして正美は煙草に火を付けると、煙を窓の外に吐き出して言った。


「アリスってさ、余り喋んねぇーな。でもアタシは好きだよ?アリスみたいな奴」


正美はそう言って笑って見せ、私が笑い返すと今度は真面目な顔をして言う。


「これ吸ったら学校に行くかぁ」

「えっ…私はまだ……」



このまま、ここに居たい。


真雪ちゃんに…会いたくない。


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