あの子と私
そうだ、お父さんに頼んでみよう……。

買ってくれるかどうかなんて分からないけど、お父さんに頼んでみるしかない。


学校が終わると真雪と一緒に、真雪の話をボンヤリ聞きながら家へと向かう。


家に着き部屋に入ると、窓際に行き父親の帰りを待った。


バカバカしく思えた勉強も、私の生活の中に染み付いていて、その勉強の事が頭の中に過りながらも、それ以上にワンピースの事が私の頭を埋め尽くす。


早く帰って来ないかな?


遅すぎると、買ってくれる事になっても、お店が閉まって明日には間に合わなくなるかもしれない。


私はひたすら父親の帰りを待つ。


そして暫くすると、父親の車が家のガレージに入り、父親が車から玄関に向かう姿を確認すると、急いで玄関に向かう。


早く…早く言わなきゃ。

玄関に着くと父親は丁度靴を脱ごうとしている所で、父親と目が合った瞬間、私は思い切って言った。


「お父さん、私ワンピースが欲しいの」


お父さんは買ってくれる…?

父親の返事を待つ。


それが凄く長く感じて、心臓がドキドキする。




でも父親は…深く溜息を吐いて、顔を曇らせて私に言った。


「仕事から帰って、”お帰りなさい”もなく、いきなりおねだりか…」

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