あの子と私
「正美さん……」


捨て犬が飼い主を見付けた時、こんな気持ちなのかもしれない。


安心して


気が抜ける。

正美は私の頭を撫でると、優しい目をして言った。


「うちに来るか…?」


私は黙ったまま頷くと、二人無口になって正美の家まで行き、正美の部屋に入る。

何を言えばいいのか分からなくて、私は正美に聞いた。


「今日は…お母さんは居ないんですか?

「……ああ」


一瞬暗くなる正美の表情を見て、それ以上聞くのは止めた。


「少しは落ち着いたか?」

「…はい」

「で、何があったんだ?あー、でもアリスが言いたくなかったら言わなくていいし、言いたかったら言えばいい」


何て……言えばいいのか分からない。


「ワンピース……」

「ワンピース?」

「ワンピースが欲しいんです……」


私がそう言うと、正美は目を丸くして大笑いして言った。


「何だ、ワンピースが欲しくて泣いてたのか。ワンピースだったら持ってるよ、アタシ」


正美はそう言うと、得意気に押し入れの中からワンピースを取り出した。


「これ、アタシのお気に入り」

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