あの子と私
手提げ袋を見せられて頷くと、ゆっこと一緒にデパートの中へと入って行く。

ヨシとトモの顔が浮かんだ。

胸がズキンとしたしたけど、私は足を止めない。

一本で本屋に行った時より心強い。

私は一人じゃない……。


「居た。あの店だよ」


そう言うゆっこの視線の先には正美の姿があって、店員は正美を気にしているみたいだ。


「とりあえず、あそこに入るから欲しいのがあったら、手に取ってみて?防犯カメラの場所は把握してる。私が死角になるように立ってるから」


私は大きく頷いて二人で店の中に入る。


「普通にね」


私とゆっこが店の中に入ると、正美は一瞬だけこっちを見て目を反らす。

私は他人の振りをして、好みのワンピースを探す。

店内を少し歩くと、以前ヨシが勧めてくれたのと同じ感じのワンピース売り場を見付けた。

私は思わず立ち止まると、ゆっこは隣に立って小さな声で言った。


「この角度なら大丈夫。欲しいのは全部入れちゃえばいいから」


私はコクリと頷くと、目の前にある白いワンピースをソッと手提げ袋に入れる。

何とも言えないスリルが私を襲う。


そして、欲しい色のワンピースを次から次へと袋に入れた。

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