あの子と私
そして、もう一枚手に取ろうとした時、ゆっこは私の手を掴んでジッと見た。


『これ以上はダメ』


ゆっこの目がそう言ってる。


「何かいまいちだねー」

「うん…」

「あっちの店に行ってみよーよ」

「うん」


私とゆっこは何も無かったかの様に店を出る。


「もう少しゆっくり歩いて」


ゆっこの言葉のまま、歩くペースを落とした。


「もう大丈夫ね。それよりアリス、初めてじゃないでしょ?」

「え?」

「初めてでも初めてじゃなくても、いいんだけどさ」


ゆっこはそう言って笑い、デパートの外に出ると二人で正美を待つ。

そして少しすると正美がやって来て、私に言った。


「いいのあったか?」

「はい」

「ありがとうございます」


正美とゆっこは私の言葉に優しい顔で頷き、ゆっこが言った。


「ねぇ、これからどうする?久し振りだし遊びたいんだけど」

「じゃあ、行くか!」


私も行っていいの?

黙ったまま、二人の後を着いて行こうとすると、正美が険しい顔をして言う。


「…アリスは帰りな」


< 159 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop