あの子と私

計算

私はなるべく人に会わないように速足で歩き、人と会っても目を合わせないように家に帰る。

家に着き部屋に入ると鞄を抱き締めたまま、ベッドに座り大きく息を吐きだした。


もう絶対に大丈夫だ。


そして今日万引きしたワンピースを鞄の中から取り出そうとした時、部屋をノックする音が聞こえ、すぐに父親の声が聞こえた。


「アリス、入っていいか」

「ちょっ…ちょっと待って」


私はそう答えると急いでワンピースの入った鞄を、クローゼットの中に入れる。

そして大きく深呼吸し、平静を装って言った。


「いいよ」

「入るよ」


お父さんが部屋に来るなんて珍しいな。
何だろう…?


もしかして、バレた……?


「…うん」


私は平静を装いながら、父親を部屋に入れる。

すると父親は紙袋を持っていて、ぎこちなく言った。


「…さっきは悪かったな。あの後買いに行って来たんだ。いつも勉強を頑張っているご褒美のワンピースだよ」


ワンピース……。


私は一瞬クローゼットに目をやると、父親に言った。


「ありがとう…」

「あぁ。じゃあ勉強、頑張るんだぞ」

「うん」


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