あの子と私
昨日父親に買って貰ったワンピースにするか、万引きしたワンピースにするか……。

真雪に言われて父親が買って来たワンピースを、真雪の前で着るのは抵抗がある。

でも万引きしたワンピースを、ヨシの前で着るのも後ろめたい。


どうしよう……。


考えて考えて、私は万引きしたワンピースを着る事にした。


もし父親が買ったワンピースを着て、真雪に『可愛いね』なんて言われたりしたら、凄く惨めな気持ちになる気がしたからだ。


真雪が居なかったら、きっと買って貰えなかっただろう、グレーのワンピース……。


クローゼットを開け、薄いピンクのワンピースを一枚選び、それに着替えた所で、部屋をノックする音が聞こえた。


私は急いで黒のダウンを羽織り、返事をする。


「はい」

「真雪だけど入っていい?」

「うん」


真雪が部屋に入る迄の短い時間で、私は想像した。


『アリスちゃん可愛い!』


真雪はこう言うに決まってる。



あの笑顔で……。


でも部屋に入って来た真雪は、ポカンとした顔で私を見て言った。


「アリスちゃん…それで行くの?」

「えっ?」

「そのワンピースの上に黒のダウン、その白い靴下は合わないよ」

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