あの子と私
でも、ヨシの部屋に置かれているベッドやテーブルは、真雪の部屋にある物より高級そうに見える。
ヨシはクローゼットの中から、トレーナーとズボンを出して私に渡して言った。
「着替えてベッドで横になってなさい」
「でも…」
「いいから。俺とトモは出てるから、着替えたら言って」
そう言って二人は私と真雪を置いて部屋を出て行き、私はヨシが貸してくれた服に着替える。
ヨシの匂いで全身を包まれて嬉しい気持ちと、ヨシが真雪を好きという現実が、又私を苦しくさせた。
「アリスちゃん、何か可愛い」
「……」
「どうしたの?気持ち悪い?熱でもあるのかな?」
そう言って額に手を当てようとする真雪の腕を振り払って私は言った。
「触らないで」
「…怒ってるの?」
真雪が初めて私に無表情で言った。
今迄、私に気遣っていた真雪が……。
「……」
真雪の整った顔立ちが、少し怖い。
「トモくんから聞いたよ。アリスちゃん…ヨシくんの事が好きなんだよね。何となく…そうじゃないかと思ってたけど」
「……」
真雪は笑顔を作らなくて、心臓の音が真雪に聞こえそうなくらいバクバクした。