あの子と私
翌日、母親は早い方がいいからと、一人で祖母の所に行く事になった。


「じゃあ、アリス。家の事を宜しくね。何かあったらすぐに電話して?今日の晩御飯は冷蔵庫にあるから、食べる前にレンジで温めるのよ」

「うん」


玄関迄送ると、母親は昔の様に柔らかい顔をして私に言う。


「じゃあ、お願いね。気持ちが落ち着いたら…なるべく早く帰るようにするから」

「うん。行ってらっしゃい」

「行って来ます」


母親は笑顔で玄関を出て行き、私はそれを見送ると部屋へと戻る。

お母さんが居ないのは寂しいけど…少しホッとする。


部屋に戻ると勉強を始めるけど、何となく気が乗らなくて、リビングに行きテレビを付ける。

真雪ちゃんは何をしているんだろう?

母親の目もあって、ご飯の時以外は殆ど顔を合わせる事も無いけど……。

今日から暫くは真雪ちゃんとお父さんと三人で過ごすんだ。

三人でご飯を食べるシーンを頭の中で想像する。

どうしてお父さんはあんなに真雪ちゃんに優しいんだろう……?

今迄全く会った事のない親戚の子。

本当は子供の頃会った事があって、私が忘れているだけなのかもしれない。

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