あの子と私
父親はいつになく穏やかな顔をしていて、私も父親に言った。


「お帰りなさい。ご飯出来てるよ」

「あぁ、美味しそうな匂いがするな。ちょっと着替えて来るよ」


父親はそう言って部屋に戻り、私と真雪はキッチンに行くと、それぞれの席に座る。

すると真雪は照れ臭そうに言った。


「大丈夫かな?味見はしてみたけど…美味しいって言ってくれるかな?」

「大丈夫だよ」


お世辞じゃなく、母親が作る料理よりも美味しそうだ。

少し待つと父親が出て来て、笑みを浮かべて言った。


「アリスは料理が出来ないと思っていたけど、二人で作ったのか?」

「私は…」


『私は少し手伝っただけ』

そう言おうとした時、真雪が言った。


「そう、二人で作ったの!アリスちゃん手際良かったよ」


……。


「そうか。じゃあ、食べてみるよ」


父親はそう言ってエビの天婦羅にツユを付け口へ運ぶ。


「美味しいよ。ツユも作ったのか?」

「うん!」


母親が居ない食卓は、本当の家族団らんみたいに穏やかだ。

そんな穏やかな空気の中、私は普通を装い、あの計画の事を考える。


テーブルの上の料理が殆ど無くなった時、私は言った。

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