あの子と私
ソッと父親の肩を触ってみる。


「……」


大丈夫。

父親はピクリとも動かず、寝息を立てている。


父親が目を覚ましたらと思うと、必要以上に心臓がバクバク鳴った。


そして私は座り込むと、父親が目を覚まさないよう、息もなるべくしないで、ポケットを探る。


……あった。

冷たい鍵の感触がある。


私はそれをソッと取り出し、鍵だと確認すると、音を立てないように急いで父親の部屋へと向かう。


ドキドキする。


早く部屋に入って、父親の部屋の鍵を返さないと、父親がいつ目を覚ますか分からない。


この部屋の中には何があるんだろう?


何も無いかもしれない……。


私は握り締めた鍵を、ドアノブの鍵穴に差し込む。


そして鍵を左に捻ると、カチッという音を確認して鍵を抜くと、ゆっくりドアを開け、急いで部屋の中に入った。


初めて入る、父親の部屋。


ドアを閉め部屋の電気を付けると、奇麗に片付いていて、物も殆ど無い殺風景な部屋が目に入る。


特に目立つ物は机とベッドしかない。


私は足音をたてないように歩き、机の前に立ち止った。

< 204 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop