あの子と私
それに……出て行くって言っても、本当に出て行くかなんて分からない。

だって真雪ちゃんは行く所なんて…無いはずだ。

少し時間が経つと、部屋をノックする音が聞こえる。


…真雪ちゃん?


『アリスちゃん。さっきはあんな事を言ったけど、私行く所が無いから、この家に居ていい?』



きっとそう言うに決まってる。


「…はい」


私が返事をすると、部屋の外からいつもより力の無い真雪の声が聞こえた。


「アリスちゃん、私が来たせいで、いっぱい嫌な思いをさせちゃったみたいで…ごめんね」


……嘘。


「短い間だったけど、優しくしてくれて…ありがとう」

「……」


その言葉を聞くと、心臓の音が少しずつ大きくなっていく。

……本当に出て行くの?

私は何も言えなくて、こんな時いつも、何て言えばいいのか分からなくて、言葉が出ない。


「じゃあ、行くね」


真雪は何も言わない私に向かって最後にそう言うと、小さな足音を立てて玄関へと向かって行く。

どうしよう……。

本当に出て行ってしまう。

心臓がバクバク鳴って、私は思い切って玄関へと向かう。


そして玄関に着くと、靴を履いている真雪に言った。

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