あの子と私
「真雪ちゃん!」


真雪は靴を履き、こっちを向くとニッコリ笑って言った。


「…ありがとう」

「……」


そして真雪は、この家に初めて来た時のように、荷物を1つ持って玄関のドアを開ける。


……。

私は家を出て行く真雪を止める事無く、真雪の後姿を見送った。

…これでいいんだ。

真雪ちゃんが来る前の、元の生活に戻るだけだ。

これで以前みたいにお母さんは笑ってくれて、家族三人で暮らせるし、学校でも以前みたいにヨシやトモと、三人で一緒に居られる。


何も


間違ってなんかいない。


私は暫く立ち竦むと、ゆっくりと部屋へと戻る。

そしていつもの様に参考書とノートを開き、勉強を始めた。

……。

真雪ちゃんは何処に行くんだろう……。

いつもは気にならない風の音が、今日は何故だか気になる。

もう12月も終わりが近付いて来たから、寒いのは仕方ないし……私には関係ない。

そんな事より…勉強しなきゃ……。


時計を何度も見ながら勉強を進めていると、いつの間にか外は暗くなり、暫くすると父親の車の音が聞こえて来た。

お父さん……?

私は急ぎ足で玄関へと向かい、父親を待つ。

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