あの子と私
中に入ると可愛い店員の声が聞こえた。


「いらっしゃいませー」

「……」


私は店員に目も向けず、窓際の席へと突き進んだ。


私は今、この店には用は無いんだ。


用があるのは……。

怒りなのか緊張なのか足が震えて、絡みそうになるのをバレないよう、必死に平然を装う。


そして真雪とヨシの席の前まで行くと、正美に視線を向けた。

正美はこっちをジッと見ていて、大きく頷くと口をパクパクさせる。


”頑張れ”


そう言ってる。


私が正美の目をジッと見て頷いた時、真雪の声が聞こえた。


「……アリスちゃん」


視線を正美から真雪に移す。

すると真雪は気まずそうな表情で、私を見ていた。


「探しに来てくれたの…?あのね、私……」


言い訳なんて聞きたくない。

ヨシと一緒に居る理由なんて聞きたくない……。


私は……真雪ちゃんの事を心配なんてしていない……。



してないんだ…!



私は何か言おうとする真雪の近くに置いてある、水の入ったコップを手に取る。

そしてそのコップに入った水を、真雪の顔に目掛けてぶっかけた。


「アリス…!」


周りの客の視線を感じるけど関係ない。


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