あの子と私
私がぶっかけた水が、真雪の髪や顔を伝ってポツリポツリと机の上に落ちる。

真雪は今にも泣き出しそうな顔をしてる。


「アリスちゃん…ごめ」


私はそう言い掛ける真雪の声を遮るように、机の上に大きな音を立てて、コップを置いた。


そして何も言わずに喫茶店を出て行く。

出口が近付く程胸がドキドキする。


怒りが静かに収まって行くほど、自分がしてしまった事に足が震えた。


でも……私は悪くない。


人混みの中から探しやすい正美の金髪頭を見付けると、小走りで正美の所に行った。


「正美さん!」


正美は私を笑顔で迎えてくれて、正美の目の前迄行くと、正美は私の頭をグシャグシャに擦りながら言った。


「頑張ったな」

「……」


私は何だかホッとして、胸が熱くなって、何だか分からないけど、少しだけ涙が溢れた。

正美は寒さで耳と鼻が真っ赤になってる。


「正美さん…私…今日は正美さんの家に行きたい…」


ヨシと一緒に居る真雪が、家に帰って来なかったら…?


家で真雪の帰りを待ちたくないんだ。

そう言う私に、正美はあの喫茶店の方をチラリと見て言う。

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