あの子と私
私はその様子をソッと見守る。

お父さんが男の子の家に外泊なんて、許すはずがない。


「もしもし。私、川野と申しますが、息子さんは帰ってますか?……うちの預かってる大事な子がお宅の息子さんと一緒に居るみたいなんですがね。女の子が一緒じゃないですか?」


私はギュッと唇を噛み締める。


「そうですか。今からそちらにお伺いしたいんですが。…じゃあ、今から行きますので」


父親はそう言って電話を切ると、早口で私に言う。


「一緒に行くぞ。家の場所は分かるか?アリスが男の子の家なんて知る訳ないか」

「……」

「まぁ、いい。ナビがある。行くぞ、アリス」

「うん」


父親は急いで家を出て、私もその後を追って車に乗り込む。

そしてナビにヨシの家の電話番号を入れると、車を走らせた。


「全く…最近の子は何を考えてるんだ!」

「……」


父親は苛立ちを隠せず、重苦しい空気が漂う。

それが伝染するように、私の苛立ちも大きくなっていった。

真雪ちゃんはもうヨシのお母さんから、お父さんが迎えに来るって聞いた?

私が無断外泊なんてしたら、勘当される。


お父さんの真雪ちゃんに対する態度も、これで変わるだろう。


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