あの子と私
魂が抜けてしまったような表情に、思わず私の顔が歪む。

ヨシはゆっくりと私に視線を向けると、力無い声で私に言う。


「どうしたの…?」


ポツリポツリ雨が降り始めて、冷たい風が頬を触った。


「…寒くない…?」

「ああ、うん…」

「せっかく風邪が治ったのに、又風邪引くよ」


私は何も知らない振りをしてヨシに言う。

でも、ヨシは凄く悲しそうな目をして、私に言った。


「風邪なんか引いてないよ。俺……」

「…言わないで」

「…え?」


ヨシの口から直接聞きたくないんだ。


「……」


私が黙るとヨシは暗い表情で苦笑いをして言った。


「…やっぱり俺、無理だから帰るよ」

「え?」


ヨシは立ち上がり、荷物を持って非常階段を降りて行く。

そんなにショックだった?

真雪ちゃんが外泊したって言った事が……。

そんなに本気だったの…?

ヨシの事を追いかけたいけど、追いかけられない。

ヨシが非常階段を降りて、雨の中を走る姿をただ見る事しか出来なくて、身体中の力が抜ける。

こんな時どうすればいいのか



私はいつも分からないんだ……。

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