あの子と私
胸がズキンとした。


そんなの…言われなくても知ってる……。


私は何を言えばいいのか分からなくて、黙ったままヨシの話を聞く。


「俺…振られた。それで…あの話を聞いたじゃん?……学校に行って…まゆの顔見るの…辛いよ」


ヨシは落胆していて


凄く落胆していて


まるで親と離ればなれになった


子猫みたいだ……。

そう思った時、トモの言葉を思い出した。


『頑張れよ』

『今がチャンスだ』


そうだよね……?

私は立ち上がり、ヨシの隣に座る。


「ヨシ…元気出して」

「……元気?出ないよ…」


ヨシは隣で顔をこっちに向け、苦笑いする。


私はその距離の近さに胸がドキンとした。


『頑張れ、アリス』



胸の中で呟く。

少しの沈黙の後、私はヨシから視線を逸らして、思い切ってヨシに言った。


「ヨシには私がいるよ」


顔が熱くなって、心臓が今迄経験した事が無いくらい速く動く。

呼吸困難になってしまいそうなくらい、息が苦しくなった。


「……」


ヨシは何も言わなくて、有り得ないくらいの緊張から、血の気が引いていく感覚に襲われる。

今、ヨシがどんな顔をしているのか分からない。

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