あの子と私

作戦

「じゃあ、又明日」

「うん」


ヨシに玄関迄送って貰い、ドアを開けるとすっかり雨は上がっていて、私は駅までボンヤリと歩く。

ヨシとのキスを何度も思い出しては顔を赤くし、駅迄の道のりも、電車の中でも家に着く迄、知らない人と目が合う度、全てを見透かされてるようで恥ずかしなった。


「ただいま」


家に着くと母親が出迎える。


「お帰り、アリス。早かったのね?」

「あ、うん」


サボったなんて言えない。


「あの子はまだ帰って来ないから、一緒におやつでも食べましょう?」

「うん」


手を洗い、リビングに行くとテーブルの上にドーナツとオレンジジュースが並んでいて、母親はテレビを付けて言った。


「ここのドーナツ美味しいのよ。あの子には食べさせたくないから、アリスが先に帰って来てちょうど良かったわ」

「……」


真雪ちゃんはまだ学校かな?

トモはどうしたんだろう?


そう思った時、テレビの中のドラマがラブシーンに入り、母親は慌ててテレビを変えて言う。


「アリスにはまだ早いわね」

「……」


お母さんは何も知らない。

私に彼氏が出来た事も


キスをした事も



知らない。

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