あの子と私
「私、ヨシがいっぱい好きになってくれるように頑張るから」

「……」


私の言葉にただ頷くだけのヨシを見て、私は母親の事を思い出していた。


父親が目の前に居ても時々見せる、あの鬼の形相……。


必死にすがる姿


あんあ姿をヨシに見せたら、絶対に嫌われる。

何を言えば好きになってくれて、裏切られないか、私は常に計算してヨシと話さないといけない。


「ヨシ、ジュース持って来たから入るわよ」

「うん」


ヨシの母親はソッと顔を覗かせる。

始めは笑顔だったヨシの母親の顔が、少し曇った。


そしてジュースを持って中に入ると、ぎこちなく言う。


「川野さん…。うちに来ても大丈夫なの…?」

「……」

今日はちゃんとして。真雪ちゃんと同じ様に、ふしだらな子と思われないようにしないといけない…。


「あ、あの……。先日は申し訳ございませんでした。私なら大丈夫で……」


そう言い掛けた時、テーブルに置いていた私の手が動き、ヨシの母親が置いてくれたジュースに当たって、ジュースがこぼれた。

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