あの子と私
「あ…ちょっと待ってね」


少しするとヨシの母親が玄関から顔を出して言う。


「今日はね、具合が悪くて寝てるのよ。だから……」


たったそれだけの言葉に泣きそうになって、私は買って来たケーキを差し出して、ヨシの母親に言った。


「これ…食べて下さい。お邪魔しました」

「ごめんなさいね…」


そう言われた時、ヨシの声が聞こえた。


「上がって」


私とヨシの母親はヨシの方を振り返り、私は聞く。


「いいの…?」

「…うん」

「じゃあ…お邪魔します」


私はヨシの母親に頭を下げ、ヨシの後を着いてヨシの部屋へと向かう。

そして部屋に入ると、ヨシから少し離れた所に座った。

ヨシはいつもより暗い。


「…体調、大丈夫?」

「あー、うん……」


ヨシはダルそうに答えると、言葉を続ける。


「俺さー。無理かもしれない」

「え?」


それは


別れを意味する言葉だって


ヨシの声のトーンで分かる。


私の心臓が

壊れそうなくらい


大きく鳴る。


聞きたくない。





イワナイデ……。


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