あの子と私
暫くすると母親の声が聞こえた。


「アリス、ご飯よ」

「うん」


私は勉強を止めて、キッチンに行くと母親に聞く。


「お父さんは今日遅いの?」


母親はテーブルの上に味噌汁を置きながら答える。


「今日は…そんなに遅くならないはずだけど、分からないわ…」

「…うん」


私は席に座りながら思う。

大丈夫。
あのテストを見せたら、お母さんも元に戻るんだ。


お父さんが帰って来たら、一緒に喜ばせてあげるんだ。


静かな食卓でご飯を食べ終わると、私はすぐ部屋に戻ってテストを握り締めて父親の帰りを待った。

そして暫くすると車の音が聞こえ、窓から父親が帰って来たのを確認すると、今日帰って来た答案用紙を握り締め、リビングへと向かう。

母親はいつも父親を出迎えるから、きっと二人でリビングに居るだろう。

リビングの前に着きドアを少し開けかけた時、母親の大きな声が聞こえた。


「ねぇ、貴方、どういう事なの?」

「…何がだ?」

「何がだ?って……。貴方はいつもそうよ。あの子から話を聞いて、貴方がいつ話してくれるか待ってたけど、いつになったら話してくれるのよ?!」


何か……揉めてる?


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