あの子と私
「アリスちゃん…」


声がする方を振り返る。

すると、私を哀れんだ目で見ている真雪の姿があった……。


これは


夢なんかじゃない



「アリス?!」

「……」


父親と母親が驚いた顔でこっちを見て、私は何も言わないで玄関に走る。


「アリスちゃん!待って…!!」


真雪が大きな声を出して追い掛けて来たけど、私は靴を履くことも忘れて、家を飛び出した。


真雪ちゃんには分からない!!

お母さんやお父さんにも分からない!!


私の気持ちなんか


分からないんだ!!!


私は追い付かれたくなくて

絶対に追い付かれたくなくて

必死に走る


後ろなんか振り向いてたら


追い付かれてしまいそうで


必死に走った


「……?!」


ひたすら走り続け


上がらなくなった足が


少し高くなったコンクリートに引っ掛かって


私は倒れ込むように


地面に横たわった


「……痛いっ」


今迄経験した事が無いくらい息が上がる


ポツリポツリ


零れ落ちる涙が


白い息をぼやけさせた



後ろを振り返ると


誰も追い掛けて来てなくて

嗚咽を漏らすほど


涙が溢れた


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