あの子と私

花火

正美の家は歩いて行くと随分遠くて、手も足も耳も感覚が無くなるくらい冷えていく。


寒いよ……。

寒い

歩いても歩いても、正美の家にはなかなか着かなくて、このまま辿り着けないかもしれない気がした。


本当は家に帰って暖かいお風呂に入りたい…。


でも、もうあの家は私の家じゃないんだ……。

そう思うと又、真雪の幸せそうな笑顔が頭の中に浮かんで来る。

もし真雪ちゃんが家に来なければ、私はお母さんに『流石アリスは私の子ね』って言われてた。

そしてご飯を食べて暖かいお風呂に入って、今頃布団の中に居ただろう……。


暫く歩くとやっと正美の家の近くの景色が見えた。

時計も何も無くて、今何時なのか、どれくらい歩いたのかも分からない……。


早く正美さんに会いたい。


疲れた足を引きずりながら、急いで正美の家迄歩くと、家の明かりは付いていない。


正美さん…寝てる?

それとも、何処かに出掛けてる?


玄関の前に立ち、インターホンを押してみたけど家の中には人の気配が無くて、私はその場に座り込んだ。


正美さん


居ないの……?


このままだと凍え死んでしまうかもしれない


寒いよ


正美さん


早く帰って来て……。

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