あの子と私
真っ暗な家に入ると電気を付け、玄関に入ってすぐの部屋に入る。


「ちょっと待ってな」


正美はそう言って部屋を出て、少しするとマグカップを二つ持って来て、テーブルの上に置いた。


「飲みな」


マグカップで少し手を温め、一口飲むとホットミルクで、私は又泣きそうになる。

時計の音しか聞こえない、シンとした部屋の中で又正美が口を開く。


「これ飲んだら落ち着くよな。子供の頃さ…これ飲みながら母親の帰りを待ってたんだ」


正美は悲しそうに笑うと又部屋を出て、戻って来て言った。


「風呂沸いたから入りな。アタシの着替えとタオル、置いといたからさ」


私は頷きお風呂場に行くと、服を脱いで浴室に入り、洗面器で頭の上からお湯を掛けた。

狭い浴室はすぐに湯気でいっぱいになる。


暖かい……。


そして湯船に浸かり暖まると、身体の力を抜き時々落ちる水道水の水をボンヤリ眺めた。

こうしていると家であった事が嘘みたいだ。

朝目を覚ますと私の部屋で、お母さんも元に戻っていたらいいのに……。


ゆっくり湯船に浸かり、身体を洗うと正美が居る部屋に戻る。


「暖まったか?」

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