あの子と私
私は……。

居場所のないあの家には帰れない。

ずっとここに居たい。
でも……。

暫く沈黙が続くと、正美が口を開いた。


「ここで…一緒に住むか?」


私は思わず顔を上げ、正美に聞く。


「…いいの?」

「ああ。こんな家でいいなら、好きなだけ居たらいい」

「…家の人は?」

「いいよ。どうせ滅多に帰って来ないから」


正美は強い口調で言うと、携帯を渡して私に言う。


「家に電話しろ」

「……」

「アリスの親が心配して警察に行ってここに居るのがバレたら、アタシがパクられるだろ?」


父親と母親の顔が目に浮かぶ。


「ほら、早く電話しろよ。……アタシが掛けてやろうか?」


これ以上正美さんに迷惑は掛けたくない。


「…自分で掛ける」


私は正美から携帯を受け取り、電話を掛ける。

あんな事があったけど……お母さん、心配してる……?

呼び出し音が聞こえてくると、心臓がドクドクし始めた。

何て言おう……。

頭の中が真っ白になる。


そしてコールが六回鳴った所で受話器が上がった。


「はい、川野です」


お父さんだ……。

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