あの子と私
「もしもし?」


心臓が爆発しそうなくらいドキドキ鳴った所で、必死に声を出した。


「……アリスだけど」


父親は一瞬黙ると、冷静な声で話を切り出す。


「アリスか。今何処に居るんだ?」

「…友達の家」

「今から迎えに行くから、住所を言いなさい」

「…言いたくない」


私がそう答えると、父親は強い口調に変わって言った。


「言いたくないとはどういう事だ?」

「私はもう…帰らない」


そう言った瞬間、母親の顔が浮かぶ。

本当に心配してくれてるなら、帰った方がいいのかもしれない。

もし私が本当のお母さんの子じゃなかったとしても、心配して迎えに来るって言われたら……。

『心配してるから帰って来い』って言われたら、私……。

少し沈黙になると、父親は大きく溜息を吐いてから言った。


「そこにずっと居るつもりか?」

「…うん」

「学校はどうする?近所の人に聞かれたら何て答えるんだ?」

「……」


そんな事?

お父さんは私が心配なんかじゃなくて、学校とか近所の目が大事なんだ。


「聞いてるのか?アリス」


心配してないなら


「……私はもう…帰らない」

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