あの子と私
「正美さん、私…一人で行って来る」
もし正美さんと二人で荷物を取りに行って、お父さんが家に居たら、正美さんに迷惑を掛けてしまう気がした。
正美は目をパッチリと開けてゆっくり起き上がると、心配そうな顔をして私に聞く。
「…大丈夫か?」
「うん。お父さんが居るかもしれないから…」
正美は少し考え込んで、優しい顔で私に言った。
「家の外で待ってるから、アタシも行くよ。もしアリスが家に帰りたくなったらそのまま見送ってやる。もし嫌な事があったら…すぐ傍に居られるだろ?」
正美さんが外で待っててくれたら、心強いかもしれない。
「…うん」
「じゃー、用意して行こう」
正美と私は服を着替え、正美の化粧が終わると二人で家を出る。
少しの緊張は家に近付く程大きくなって、無口になった。
「正美さん、ここ」
家の前に着きそう言うと、正美は少し目を大きくして言う。
「立派な家だな。……本当に一人で大丈夫か?」
父親の車は無い。
「うん。行って来る」
「ああ。もし遅くなっても待ってるから。何かあったらすぐ呼びに来いよ」
「うん」