あの子と私
私は一呼吸置いてから歩き、玄関の前に立つ。

一晩帰らなかっただけなのに、随分久し振りに入る気がした。

お父さんの車は無かったけど、お母さんはまだ居る?

もしかしたら、真雪の嘘に気付いて私の帰りを待っているかもしれない。

心臓がバクバクして、少しだけ震える手で、ゆっくりと玄関を開けた。

玄関を開けるとすぐに母親の靴を確認する。


無い……。


一気に気が抜け、ガッカリする気持ちとホッとする気持ちが混ざり合って、悲しくなった。


早く……荷物を纏めて正美さんの所に戻ろう。

そう思い、私の部屋に向かう。



そして部屋に入ると、いつもと違う気がした。

制服と教科書と衣類を持って行こう。

クローゼットを開けようとした時、クローゼットの前に大きな鞄が置いてある事に気付いた。


……何?


鞄を開けようとした瞬間、ドアの方から声が聞こえた。


「アリスちゃん」


……。


真雪だ。

何でここに居るの?

とっくに学校に行ってると思ったのに……。


真雪だけには、こんな所見られたくなかった。


私は目を反らし、クローゼットを開けながら真雪に言う。


「何?今急いでいるから」

「荷物なら纏めなくても大丈夫だよ」


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