あの子と私
「…え?」


クローゼットの中には、制服も服も無い。

真雪を見ると、真雪は笑顔で言った。


「アリスちゃんが取りに来ると思ってね、その鞄に詰めておいたの」

「……」

「教科書でしょ、制服でしょ、服でしょ。参考書を入れると重くなっちゃうから入れなかったけど、どうする?」


勝手に人の部屋に入って、勝手にこんな事をするなんて……。

私に早く出て行けって事……?

真雪に対する怒りが沸々と沸いてくる。


「あ、それからこのポーチだけど、化粧品なの。良かったら使って?」


真雪はそう言って鞄の中にポーチを詰め込む。


「アリスちゃん、困った事があったらいつでも言ってね」


真雪はそう悲しそうな顔で言い、私に鞄を差し出す。

私はそれを奪い取ると急いで玄関に向かった。


許せない…!


元々自分が住んでいたような顔をして、私を哀れんだ目で見て……絶対に許せない!!

家を飛び出して正美の前に行くと、正美は笑顔で迎えてくれて泣きそうになる。


「どうしたんだ?親に怒られたのか?」


私が首を横に振ると、正美は優しく言った。


「帰ろうぜ。アリス」


正美さんが居て本当に良かった……。


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