あの子と私
「で、こっちがアリスな」


正美がそう言うと、カズとタカはこっちを向き、私は小さく頭を下げる。

カズは又ゲームを始め、タカはこっちをジッと見るとタバコを一口吸い、私の方に向けて煙を吹き出す。


苦しい…。


少し咳き込む私にタカはニヤついて聞いた。


「タバコ吸えねぇの?」


何?
何かムカつく…。

私は黙ってタカが持っているタバコを取り、箱から一本取り出す。

すると正美が大きい声で言った。


「止めな、アリス。アリスはアタシと違うんだから、タバコなんか吸わせんじゃねーよ」


その言葉を聞いてタカは私からタバコを取り上げると、優しそうな顔で笑って言った。


「お前、気がつえーな」

「……」


そんな事、生まれて初めて言われた。

そして暫くすると、カズはゲームを止め、正美は嬉しそうな顔をして言う。


「じゃー、そろそろ行こうぜ?」

「そうだな。日が暮れると寒くなるし、そろそろ行くか」


行くって…?

私は正美に聞く。


「何処に行くの…?」

「アリスにはまだ秘密。でもすっげーいい所。なぁ、カズ。行く前にうちに寄ってくんねー?」

「いいよ」

< 294 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop