あの子と私
「そうね。アリスが頑張って良い点を取れば、お父さんだって喜ぶわ。頑張るのよ」
母親はそう言って優しい目で微笑み、私は頷いて自分の部屋へと戻る。
そしてクローゼットを開けると、さっき万引きした参考書を取り出した。
高校一年生…数学の参考書だったんだ。
私は今まで万引きした参考書の隣に、その参考書を並べた。
「……沢山仲間がいるから寂しくないよね?」
そう呟いてクローゼットを閉じると机に向かった。
そして又勉強を始める。
暫くすると母親の声が聞こえた。
「アリスー、お父さんが帰ってきたわー。ご飯にしましょ」
「うん…」
もう18時だったんだ……。
私は勉強をする手を止めると、食卓に向かう。
食卓に着くと父親は少し不機嫌そうで、手を洗い食卓の椅子に座ると母親が言った。
「ねぇ、貴方。この前の試験もアリスが学年で一番だったのよ」
「……今の時代は勉強が出来ないと話にならないからな」
「…そうね。アリスはもっと頑張らなきゃダメね」
「……」
父親が箸を置き、母親が聞く。
「もう食べないの?」