あの子と私
担任は校長室から出て行き、暫くすると副担任の荻野が校長室に来て言った。


「川野さん。お父さんが来られたわよ」

「……」


本当に来たの……?

もしかしたら、本当は心配していたのかもしれない。


『電話ではあんな事言ったけど、本当は心配してたんだ。ごめんな。帰ろうアリス』


そう言ってくれるかもしれない。


「じゃあ私も外に出てるから、ちゃんとお父さんと話すのよ?」


荻野と小谷が出て行き、少しすると父親が入って来る。

そして目が合うと父親が言った。


「アリス…何なんだ?その格好は……」

「……」

「やっぱり…下らない連中と付き合ってるんだな…!お前が唯一人より勝ってるのは勉強だけなのに、こんな事でどうする?これ以上お父さんに恥をかかせないでくれ!!今日は帰るぞ!」


やっぱり…心配なんてしてなかった……。


「……帰らない」

「近所がおかしく思う前に帰るんだ…!!」



よく考えたらお父さんはいつも私には興味が無かった……。


私の心配じゃなくて、自分の体裁が心配なんだ。


あの時の電話で


分かってたはずなのに……。


< 306 / 319 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop