あの子と私
教室のドアを開けると授業中で、みんなの視線が一斉に集まり、ヒソヒソ声が聞こえる。

真雪の方を見ると、心配そうな顔でこっちを見ていて、私はすぐに視線を反らし、ヨシの席の方を見る。


来てる。


ヨシは少し驚いた顔をしていて、私は席に座った。


机の中から教科書を出したけど、やる気にならない。


あの家を出たんだ。


もう頑張っても大学に行くお金なんてない。


頑張っても喜んでくれる両親も居ないんだ。


いつもの癖でノートは取ってみるものの、父親のあの冷たい後姿が頭の中を占領する。


授業が終わりすぐヨシの所に行くと、ヨシが聞いた。


「昨日休んでたけど、どうしたの?」



あの夜の事……。


父親の背中……。


胸が一瞬で苦しくなる。


私は少し黙ってからヨシに言った。


「実はね…、色々あって家を出たんだ……」


ヨシは驚いた顔をして私に聞く。


「アリスが…?」

「うん」

「それで、今は何処に居るの?」

「…友達のとこ」


するとヨシは優しい顔をして言った。


「そっか。何かあったらいつでも言って来なよ」

「うん!」

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