あの子と私
「ほら!」


トモはそう言って大量の海水を、私に思いきり掛けた。
髪の毛迄沢山濡れて、ポツリポツリと雫が落ちる。

嘘でしょ…?


「酷い…」

「そんな事言ってないで、アリスもやれよ。やらなかったら、一方的に掛けられるだけだぞ!」


こんなに濡れてたんだ。
これ以上濡れても濡れなくても、何も変わらない。

私も……。


「トモ…ヨシ」


私の声に振り向く二人に、思いきり海水を掛ける。


「やるじゃん!」


三人で暫く海水を掛け合い、三人ともびしょ濡れになった。


「あー、これじゃ帰りの電車、目立っちゃうね。タクシーにしようか?」

「金足りんの?」

「俺んち最後に送って貰って、親に払って貰うよ。とりあえず、髪とか服とかトイレで水洗いでもして、少し乾かしてから帰ろうよ」


ヨシの提案でトイレに向かうと、洗面台で頭から水をかぶり、塩水を洗い流す。
洗面台の鏡を見ると、日焼けして顔が真っ赤になっている。

帰ってからの事を考えると、憂鬱になった。

帰りたくない……。

ポケットからハンカチを取り出し水で濡らすと、腕や足や制服を何度も何度も拭く。

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