あの子と私
「うん」


二人で赤外線で番号交換をしていても、ヨシが真雪を気にしているのが分かる。

私の家族を取られて、ヨシ迄取られるなんて許せない。

やっぱり、ヨシの傍を離れてはいけない。

いつの間にか私から離れて行ったお母さんみたいに、ヨシ迄居なくなったら……。


だから真雪がヨシに近付く隙を与えないように、私がヨシの傍にいつも居るんだ。


「ヨシ、今日家に行っていい?」

「今日は……。そうだね、アリスも色々あったみたいだから、今日はうちで話そうか」

「うん。そろそろチャイムが鳴るから戻るね」


席に戻ると授業が始まり、授業が終わるとヨシの席に行き、いつもより長く感じる全部の授業が終わると、又ヨシの席に行った。


「ヨシ、帰ろう」

「うん…」


ヨシと居れば居る程、真雪を気にしているのがよく分かる。

いつも視線の先には真雪が居るんだ。

二人になると相変わらずヨシは無口で、家に着くと会話の無い空間を音楽でごまかす。


何を話せば良いんだろう…?

真雪だったら、何を話す…?


会話が見付からなくて、ヨシも話さなくて、時間が凄く長く感じた。


そして又、不安になる。

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