あの子と私
父親は黙ったまま大きく息を吐くと、自分の部屋に向かった。そんな父親の姿を見て母親は私に言った。


「何が気に入らないのかしらね……。アリス、貴女だけが私の希望よ。だから頑張るのよ」

「うん。私…頑張るから」


そう言って私は昔を思い出す。
小学生の時に一度だけ、65点を取ったことがあった。


『お前がしっかり教育してないからアリスがこんな点を取ったんだ!!』

『貴方はいつもそうやって…私に何もかも責任を押し付けるのね!あの時だって……』

『貴方が…貴方が先に言い出したんじゃない!!』


私が良い点を取らないと両親は喧嘩になる。
だから私は頑張らないといけない。

私がダメだから、お父さんとお母さんが喧嘩をするんだ……

頑張らなきゃ

頑張って良い点数を取って、いい大学に行かなきゃ……

そしたら全てが上手くいくんだ。

苦しいよ……。


「アリス……?どうかしたの?」


私は息が苦しくなるのを必死に隠して母親に言った。


「ごめんね、お母さん。私、勉強があるから部屋に戻るね」

「そう。又お夜食でも持って行くから、頑張るのよ」

「…うん」


私は食べかけの物をそのままにして、部屋へと急いだ。
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