あの子と私
学校が終わって家に帰ると、私は又勉強を始める。


「アリス、帰ってるの?」

「うん」


母親は部屋に入って来てベッドの上に腰を掛けると私に言った。


「勉強してたのね。本当にアリスがいい子で良かったわ。このままいけばT大だって行けそうだし、やっぱりアリスはお母さんの子ね」

「……」


私の頭の中で母親の声がこだまする。

『本当にアリスがいい子で良かったわ』

息がおかしくなりそう……。


「あらあら、ごめんなさいね。お母さん、勉強の邪魔だったわね。じゃあ、夕飯の支度でもするから頑張るのよ」


そう言って母親が部屋から出て行き、ドアが閉まる音を確認すると私はシャーペンを思いきりノートに突き刺した。

”頑張るのよ”

私…頑張ってる……。

足りない…?

”アリスがいい子で良かった”

私……いい子なんかじゃない…。


行け……!

行くのよ、アリス。


私は又、クローゼットの中から空っぽの鞄を取り出し、参考書を入れると部屋を飛び出す。


「どうしたの?アリス」

「…ちょっと調べたい事があるから……」

「図書館に行くの?早く帰るのよ?」

「…うん」

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