あの子と私

あの子

「ただいま」

「お帰り、アリス。最近顔色がいいわね。勉強が順調なのね」

「うん」

「そう。頑張るのよ?今日もご馳走にするから。いいわね、こうやって家族が揃ってご飯を食べられるのは」


母親は笑顔でそう言い、私は頷いて部屋に向かう。

最近、お母さんは機嫌がいい。

お父さんがやっと、私たちに目を向けてくれるようになったって、この前嬉しそうに話してた。

私はお父さんが家に居る時間は増えたけど、それ以外に何が変わったのかよく分からない。


でも


お母さんが幸せそうな顔をしているから、良かった。


そして私は部屋に戻ると勉強を始める。


万引きなんて暫くしてない。


時々息が詰まりそうになる時は、クローゼットを開けて、トモに買って貰った参考書を抱き締めて、必死に唱えた。


「大丈夫、大丈夫だから」


って。


そんな事をするのも、随分減った気がする。

お父さんとお母さんの喧嘩も減って、学校に行けばヨシとトモが居るからだ。

ずっとずっと、今が続けばいいけど、後1年ちょっとで卒業なんだ。ヨシとトモと、バラバラの進路になっても一緒に居られたらいいのに。


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