あの子と私
前にも買って貰ったのに…?


「気にしなくていいよ。俺が買いたいから買うんだから」

「ううん。買うなら行かない」

「……。分かったよ。じゃあ見るだけにしよ?」

「うん」


右にヨシ、左にトモ。二人に挟まれて女性服売り場へと移動する。


「アリスはいつもどんな服を着てるの?」


ヨシにそう聞かれた瞬間、クローゼットの中を思い出した。

少しだけ首回りが伸びたトレーナーと、色褪せたジーンズ……。


お母さんが言ってた。


『お洒落は勉強の邪魔になるから、大学生になるまではこれでいいわね』



「アリス…?」


トレーナーにジーンズしか持ってないなんて、ヨシには恥ずかしくて言えない。


「普通だよ。…あんな感じ」


私はそう言って、少し遠くに居るピンク系の花柄のスカートに、ブーツを履いたお洒落な女の子を指差した。


「へー、アリスはパンツとか履くタイプかと思ってたけど、スカート派なんだね」

「…うん」


私服で一緒に出掛けるなんてないだろうから、大丈夫だ。

これくらいの嘘……。

そして少し歩くと、さっきの女の子が着ていたような服が沢山並ぶお店へと入る。

< 76 / 343 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop