あの子と私
少しだけ遅くなったけど、大丈夫。


「ただいま」


家に帰ると少しだけ、いつもとは違う何かを感じる。

何か少し重い、暫く無かったあの空気……。


少しすると、少し顔色の悪い母親が出て来て言った。


「…お帰りなさい。今日は遅かったのね」

「図書館に寄ってたから」

「そう……。アリスが…アリスが帰って来ないんじゃないかって、心配になったわ」


やっぱり何か、お母さんがおかしい。


今にも消えてしまいそうな



「お母さん、何かあった?」


私がそう聞くと、母親は不安そうな顔をして言った。


「お父さんとね、連絡が取れないのよ」

「仕事中なんじゃない?」

「ううん。いつもは仕事中でもすぐ折り返して電話があったもの」


母親はそう言って、今にも泣きだしてしまいそうな顔をする。

私はいつもこんな時、何て言えばいいのか分からない。


「お母さん、カツ丼でいいよ」

「いいのよ、アリス…。きっとお父さんは帰って来るから……。ご飯…作るわね。アリスは勉強をしてなさい」

「うん……」


母親はキッチンに向かい、私は部屋に戻り、鞄の中から教科書を取り出す。

すると教科書と一緒に、少し前に撮ったプリクラが出て来た。

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