あの子と私
「お前…怪しまれてる」

「……?!」


振り返ると相川くんが立っていて、続けて言った。


「さっきからあのおっさん、お前の事見てる。早く戻せ」


私は相川くんに言われるがまま、慌てて本棚に参考書を戻すと、相川くんに手を引かれ本屋を出る。

相川くんが掴む手が痛い。


「……相川くん?」

「走れっ」

「…えっ?」

「いいから、行くぞ!」


何が何だか分からないまま、相川くんに手を引かれ私は走った。

体育でもこんなに必死に走った事がなくて、息が切れる。


「何処までっ……走るのっ…?」


私がそう言うと、相川くんは握っている手の力を緩めて言った。


「この辺でいいだろ。そこに公園があるから」

「……」


二人少し距離を開けて、公園まで歩いて行く。

本屋さんにはバレなかったけど
相川くんにはバレた……。

私が万引きしていた事

相川くん、明日学校でみんなに言うよね?

優等生の私が万引きをしていたなんて、誰が聞いても面白いに決まってる。

そして公園に着くと、相川くんは口を開いた。


「お前、万引き初めて?」

「…相川くんだって……悪い事してるでしょ…?」


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